ショパンのアナリーゼと奏法

ああ、ショパン!!幻想ポロネーズ。
ショパンの作品の中で、バラード4番と同じくらい心がヒリヒリする作品です。私はこの作品を人前で弾いた事がまだありません。大切にあたためてあたためて、いつか舞台で弾く事になるでしょう。「本当は大勢の前で弾くような曲ではないな」と感じるほどに、言葉では絶対に表せないショパンの心の奥底のものが、あまりにも作品に溢れているので、エンターテイメントにはしたくない、という気持ちが強いです。ショパンには、そのような作品がたくさんありますね。本人が大勢の前で弾くのを嫌がった理由、とてもよくわかるのです。自分のために書いている日記を、みんなの前で朗読するような、、、そんな感じさえします。
こちらは幻想ポロネーズの譜面です。私の1番大好きな部分のアナリーゼ(楽曲分析)です。
148小節 Poco piu lentoから、写真冒頭177小節に辿り着き、下降して、180小節目。突如終止するこの和音(黄色の丸)。この空虚感。。もう、すごいですね。。
そして、フェルマータからの、浮遊するような右手ソロは、どこに進んでいくのか読めない不安感そのもの。そこからの182小節(緑の丸)、この和声から導かれるように、不安と安堵の狭間で揺れ動きつつ、前進します。
そして185小節(青の丸)、突如目の前に現れる光!希望。右手の跳躍Gis→Fisの7度の跳躍が光に手を伸ばすようで、涙が出てきますね。
そして、186小節(赤の丸)、闇の中から自ら一歩一歩光を目指して、扉をこじ開けるように前進し、最高音Gisに到達するや否や、力が抜けたように下降していきます(赤のライン)。しかし、光の存在を知った今、気持ちは下降しつつも、どこか足取りに自信が見え、一歩の踏み込みに力が生まれている様(紫のライン)が、左手のベースの動き(和声)に表れています。本当に天才ですね。
このあと195小節目、足取りが止まり(左手が空き)、右手が連打の付点リズムでジワジワと上昇し、直後196小節、何かが頭上に表れます。ページが変わり、7小節のトレモロ。これは天からの恩恵、光のシャワーです。この7小節は、時間が止まっているように私は感じています。

こんな事を思い、譜読みをしています。作品の中に人の心があって、それは宇宙のような無限の繋がりを見せてくれます。自分が作曲家の中に、作品の中に、入っていく。ただそれだけで、たくさんの事が見えてくる。そんな時、無意識ですが、エゴは消えていると思います。だから、通じ合える。人とのコミュニケーションと同じです。

ひとつ、ショパンの奏法のこと。やっぱりショパンは手首の柔らかさがあってこそですね。4の指を多用する独特の運指も、手首の柔らかさが必要不可欠で、固まったまま指だけで頑張って動かしても、ショパンの運指では弾けないのです。手腕のポジションを移動させて弾く奏法は、手首の柔らかさと、指の力を抜くことがキーです。詳しくはレッスンで。