音価の違いを知る

どんなに長いフレーズであっても、必ずその中に軸となる音、和声があり、そこをしっかりと押さえられれば、その前後の流れは自由に遊べるのがクラシック音楽です。

軸となる音、和声を瞬時に掴んで、譜読みの段階で自然に認知できるのがプロフェッショナルです。例えばアンサンブルの際、多少解釈の違いがあっても、その軸を解っているもの同士の場合は、無理に合わせようとしなくても、身体がそちらに自然とついていくような感覚になり、気持ちよくハマるものです。互いの違いに緊張感を持ちつつ、その狭間に耳を澄まし、呼吸を合わせる集中力を生み出します。スリリングかつ、生きた音楽としてのライブ感を楽しめるのです。

どうやってその軸となる音、和声を見つけるようになれるのか。それは、子供の頃からバッハや古典を「構造の理解を持った上で弾き」、基本的な音楽の構造を身体に入れる事ですね。

やっぱり基礎が大事。そこが根底にあるか無いかは、聴く人が聴くと、すぐにわかってしまうものです。例え素敵な演奏であっても、基盤となる構造感が無いと、感覚的になり過ぎてしまい、まとまりがなくなったり、弾いてる本人も居心地の悪さからは離れられないと思います。まさに、ハマらない、という感覚でしょうか。ロマン派の作品では、歌うことで「雰囲気弾き」する事もできなくは無いですが、、、それは聴く人が聴けばすぐわかっちゃう。

【音価】という言葉があります。全ての音が大事なのは前提として、それぞれの音の「音価は違う」ということ。要となる、軸となる音(和声)と、その前後の繋ぎの音や、導きの音を、違ったニュアンスで音にする。それは音楽という宇宙の暗黙のルールのようなもので。この制限があるからこその、自由。そして、そこにある美しさ、尊さ。