Yukiho

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自分の体感と、実際の演奏の速度の違い

昨年11月22日のリサイタルより、演奏をアップしました。あれから半年ですが、今のほうが上手くなってる、もっと細かいニュアンスがつけられるのに、、、と思いつつ(笑)皆さん、ご自分の演奏を録音したことがあるかと思います。その音源を聴いて、自分が思っていた以上にテンポが速いと感じたことはありませんか?私は、過去自分の録音を聴いて、「何をそんなに焦っているのだっっ!」と思ったことがあります(笑)実際演奏していた時の自分の体感としては、普通に弾いているつもりでしたので、まぁびっくりです。。これもひとつの、ステージマジック。本番での脳の状態は、日常での脳、はたまた練習時の脳とも、明らかに違います。脳は常に一歩先を見越して弾いていますから、実際の時の流れを先取りしている状態です。という事は、実際の時間のスピードは、弾いている時の脳が感じるスピードより遅い、ということですよね。(???)はい。伝わっていますでしょうか、、、汗実際の時間軸より、脳が先回りしてるので、それに任せて弾いてしまわずに、音の入り(1音のタッチに入る0コンマ何秒の集中)と音の出(音の消え方を意識して指をどう離すかに集中)を、耳で追いかけるように弾く。どんなに速いテンポの作品でもです。そうすると、結果としてちょうどよい速さになると思います。←言うのは簡単(笑)脳を拡大して、耳を遠くに伸ばすように。この非常に抽象的ですが、わかる人には絶対にわかる表現(笑)これをいかに落ち着いてやるか・・・緊張下に置かれていながらも。体・心・脳、この3つのコントロールが成されての技術。これってある意味、「悟り」を目指す修行僧のようですね。これからは、もっともっと脳と耳を拡大して演奏できるように、意識を変えて行こうと思います!

ショパンの装飾音とルバート(リストとの違い)

ショパンらしい演奏、ショパンが感じられる演奏には、繊細で洗練された装飾音や、自然なルバート(音符の長さを自由に変化させる事)が常に存在しています。それは、歌うようであり語るようであり、心のひだが音に表れる、そんな演奏です。私は何故かこの感覚が、元々身体にある気がします。だからショパンが好きで、ショパンの演奏にこだわるのかもしれません。素晴らしいピアニストの演奏をコンサートや録音で聴きますが、他の作曲家の演奏は「素晴らしい!」と感じても、ショパンとなると、「うーん。。」となる事が多い私です。。特に、リストっぽいショパンを聴くと、帰りたくなります(笑)リストは和声的に装飾音を散りばめているので、一気にバッと弾くことで、唸りを効かせたり、キラキラした輝きを見せる事が出来ます。装飾音的なフレーズを、固まりとして弾くと、カッコよく決まるのです。対してショパンの装飾音は、全て旋律内の音として、1音1音に言葉が付いているかのように、ニュアンスを着けて美しい歌にすることを求められます。ですので、ショパンの装飾音的なフレーズは、決してリストのように弾かないでっ!!←懇願(笑)そして、ルバートの掛け方。ショパンのルバートに関して、当時リストはこう述べています。「あの窓の外に見える樹々を見てご覧なさい。風にざわめいて葉が波打っているのが見えるでしょう。でも、幹の方は少しも動じていないでしょう。これがショパンのルバートですよ。」ここでの「風に波打つ葉」は、右手の旋律を、「動じない幹」は、左手の伴奏型を指しているのでしょう。リストさん上手いこと言いますな!右手は美しく自然に歌う歌手、左手は優れた伴奏者です。左手が右手の歌を支えつつ、導いている状態。流れを掴んでいるのは、左手だと思います。美しい右手の旋律に耳が行きがちですが、大切なのは左手です。左手の伴奏に歌が宿り、歌の呼吸を左手でコントロール出来れば、あとは右手の旋律は安心して身を任せるように自然に表現ができます。左手の和声を聴きながら、右手の旋律を自由に弾く、それが、ショパンのルバートです。ある意味で、左手と右手の独立を求められていると感じます。対してリストは、上に書いた装飾音の扱いと同様、やはり和声的です。左手と右手のパートを1つの固まりとして、同時に絡めてルバートをかけるイメージになります。同じロマン派を代表するピアニストであり作曲家である2人ですが、音楽の作りがそもそも違うのです!性格の違いだけではなく(笑)もうお気付きかと思いますが、ピアニストにとって、リストは実はとっても弾きやすいのです。弾きやすいのに、難しく派手に聴こえるように効果的に作られています。それに対してショパンは、、はい、難しいのです。何故なら、ハマらないと、弾きづらさを覚える作曲家だからです。ショパンマニアの私としては、レッスンで生徒さんにショパンを近付けることが、たまらなく好きです。

打鍵が深いピアノだと…

基本的にアップライトピアノは、打鍵を深くする事で反応します。と同時に、状態が良くないグランドピアノの場合も、鍵盤が重く、深い打鍵をしないと、音が鳴ってくれません。この深い打鍵というのが、指に力を込める事になり、結果的には響きを潰してしまう原因になります。別の言い方をすると、倍音が聴こえなくなるのです。音量の範囲という単純な事だけではなく、響きにニュアンスをつけ、より繊細な表現を求めようとした時、アップライトピアノでは構造上の限界があるのは確かです。演奏の仕事の際、現場のピアノがアップライトである事も多くあります。そんな時はどうしているかと言いますと、繊細な音色表現が出来づらいので、結局のところ音の大小(音量)や、少々大袈裟にルバートをかけるなどして、存在感を出すように弾いています。本来ならあまりやりたくはない表現ですが(笑)演奏者として必要な対応力だと思い、「本当はもっと表現に幅があるんだけど。。。」という悲しみは持ちつつ、自分を納得させていますd( ̄  ̄)では、「鍵盤が軽ければそれでいいの?」というと、そういう訳でもなく。軽過ぎると、逆にコントロールが難しくなります。鍵盤の深さ約1cmの感覚が、手に浮力として感じられる状態がベストです。この状態が得られるピアノで、以下のテクニックを用いて音色を変えます。①指を降ろすスピード。鍵盤約1cmの深さを、早く降ろすのか、ゆっくり降ろすのかのスピードの違い。②鍵盤に触れる指の角度。指の先、側面、腹の部分、(第1関節辺りまでの指の腹)など、指の角度の違い。(指だけで角度をつけるのではなく、上腕 前腕 手首 手 、全ての角度込みです。)③手指の向かう方向。(腕全体含む)前側に押し出す、斜めに入る、自分の方に引き寄せる、などの方向性。④鍵盤の深さ何ミリを意識するか。鍵盤の浅いところを狙う、または深いところを瞬間的に捉えて脱力するなど。これらの奏法を使い分ける事で、明らかに音色が変わります。奏法という名の演奏技術です。この技術は、☆状態の良いピアノであるからこそ生かせる☆という事が本当に重要。ピアノの状態は、調律師さんの技術もありますし、持ち主の弾き方によっても、楽器はどんどんと変わっていきます。楽器の可能性というのは、本当に計り知れないのですね。生かすも殺すも、私たち人間という事です。打鍵が深いなぁ、鍵盤重いなぁ、とお感じの方は、調律師さんとご相談なさってみて下さい。もし対応が難しいようであれば、思い切って調律師さんを変える事をオススメします。それと同時に、ご自身の奏法を今一度見直してみると、今までのお悩みから解放される第一歩になるかと思います。